
築30年の市民会館屋上に迫った改修の決断。ポリマーセメント系塗膜防水・通気緩衝工法という革新的な防水改修工法が、防水層の膨れや破断のリスクを抑えて、建物の防水機能維持・存続の未来へつなげます。
日本の屋上防水において、アスファルト防水は半世紀以上にわたり標準的な仕様とされてきました。原油を精製して得られるアスファルトをシート状に加工したアスファルトルーフィングを、複数枚積層して加熱・融着させ、防水層を形成します。
そうして形成された厚みのある防水層は「重厚かつ堅牢」であり、適切に維持管理されれば20年以上の耐用年数を誇ります。
昭和から平成にかけて建設された学校・病院・庁舎・集合住宅の屋上を支えてきた実績は、アスファルト防水が「信頼の工法」として根付いた証といえるでしょう。
しかし一方で、施工時に火気を用いるため安全管理が必須であり、煙や臭気の発生も避けられません。環境意識の高まりや、建物を使いながらの改修工事(居ながら施工)が増えるなかで、この課題は顕在化してきました。

今回の舞台は、某地方都市の市民会館。築30年以上が経過し、延べ数十万人が利用してきた建物です。
既存の屋上防水は露出アスファルト仕様。亀裂や膨れが目立ち始め、表面温度の上昇による劣化も進んでいました。
「現在のところ漏水はない。しかし、一度でも館内に雨水が入れば、舞台設備や備品が使えなくなる」
管理担当者はそう語り、予防的な防水改修工事を計画しました。
ただし条件は厳しいものでした。
• 平日も休日も利用が絶えず、工事中も閉館できない
• 周辺は住宅地で、臭気や煙の発生は避けたい
• 公共予算には限りがあり、撤去・新設はコストが大きすぎる

発注者である市の担当課は、まず「利用者への影響を最小限にすること」を強く要望しました。
「工事をやる以上は仕方がない、では市民に理解を得られない。静かで安全に進めてほしい」
施工を請け負った防水工事会社も頭を抱えました。
「アスファルトを積層し直せば確実だが、火気の使用と臭気は避けられない」
「ウレタン塗膜防水も考えたが、溶剤臭を完全には抑えきれない。居ながら施工ではリスクがある」
何度も打合せが重ねられ、最終的に浮上したのが ポリマーセメント系塗膜防水材ビッグサンRX工法 でした。
ビッグサンRX工法は、ポリマーセメント系塗膜防水材を用いた工法です。最大の特徴は、オール水性材料で通気緩衝工法を実現した点にあります。
通気緩衝工法とは?
改修工事では、下地や躯体内部に残留した水分が水蒸気となって、上昇してくることがあります。これが新しい防水層を下から押し上げて、膨れを引き起こし、改修した防水層を短期間で傷めてしまうことになります。
RX工法では、防水材の直下に通気緩衝シートを敷設。このシートが蒸気の通り道となり、脱気筒を介して屋外に逃がします。これにより防水層内部の膨れを防止し、安定した防水性能を長期にわたり確保できるのです。

この仕組みは、塗膜防水での防水改修工法において「唯一無二」といえる画期的な手法であり、アスファルト防水改修における最大の弱点を克服しました。
下地追従性とJASS 8対応
さらにRX工法は、下地追従性に優れ、コンクリートのひび割れにも柔軟に対応できます。建築学会標準仕様書 JASS 8(防水工事)に準拠した疲労性試験にも合格しており、その性能は裏付けられています。
評価基準の厳しいUR都市機構の保全工事共通仕様書にも盛り込まれています。(UR仕様)
施工は以下の手順で進められました。
1. 下地処理
膨れや浮きを切除し、樹脂モルタルで平滑化。
2. 通気緩衝シート敷設
屋上床面全体に専用の水性ボンドで通気シートを接着し、シートの繋ぎ目は専用のジョイントテープを用いて補強貼りを行います。脱気筒を要所に設置。これが後の膨れ防止の要となります。
3. 防水主材の塗布(1層目・2層目・3層目)
ポリマーセメント系防水材をローラーで重ね塗り。所定の膜厚を確保し、通気シートの上に強固な塗膜を形成。
4. トップコート仕上げ
太陽光を反射する太陽熱高反射塗料のトップコート(遮熱トップ)で仕上げ。屋上表面温度の低減、省エネ効果も期待できます。
施工中は火気の使用もなく、臭気も最小限。市民会館は工事期間中も通常通り開館し、近隣からの苦情もゼロ。むしろ「今日は工事しているのに全然臭わないね」と住民から驚きの声が上がったほどでした。
メリット
• 居ながら施工に最適:火気不要・低臭気・低騒音で利用者に影響を与えにくい
• 膨れ防止性能:通気緩衝シート+脱気筒により、改修工事特有の膨れのリスクを解消
• 高い下地追従性:コンクリートのひび割れにも柔軟に対応
• 優れた耐疲労性JASS 8準拠:JASS8準拠の疲労試験によりA4区分相当の耐疲労性能を確認
• 環境配慮:撤去廃材が少なく、CO?削減にも寄与
• 省エネ効果:太陽熱高反射塗料のトップコートにより屋上温度を低減
• 施工性が向上:従来の密着工法に比べて施工性が良好に
デメリット
• 通気緩衝シートや脱気筒などの専用部材が必要になることで、密着工法よりも材料費が割高に
• アスファルト防水ほどの「物理的厚み」はないため、心理的に不安を持つ施主もいる
完成した屋上はシームレスで均一な防水層に覆われています。市の担当者はこう語ります。
「市民に迷惑をかけずに工事ができ、しかも予算内に収まった。これ以上ない成果です」
施工会社の所長も胸を張ります。
「通気緩衝工法による安心感は大きい。改修現場における“膨れのリスク”という永年の課題に対し、明確な答えを出せたと思う」
アスファルト防水は長い歴史を持つ工法ですが、改修の現場では「臭気・火気」「膨れのリスク」という課題がありました。
その解決策として登場したのが、ポリマーセメント系塗膜防水・ビッグサンRX工法です。
• 通気緩衝工法による膨れ防止
• 下地追従性とJASS 8準拠の耐疲労性能の安心感
• 居ながら施工を可能にする低臭気・火気不要の特性
建物の長寿命化が叫ばれる今、施主・施工者・利用者の三者にメリットをもたらす工法として、ビッグサンRX工法はアスファルト防水改修の新たなスタンダードになっていくでしょう。

ビッグサンRX工法についてはこちらです
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